2次元検出器によるX線応力測定

2,640 (税込)

本書は2次元検出器を利用したX線応力測定の現状をまとめ,新しい測定方法についても詳述.

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判型 A5判
第1版
ページ数 139
発行日 2015/10/27
ISBN-13 978-4-8425-0539-8 C3053
ISBN-10 4-8425-0539-7
JAN 1923053024009
図書館: カーリル
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目次

第1章 既往のX線応力評価
第2章 cos α法
第3章 粗大粒からの回折斑点
第4章 2D法
第5章 溶接金属の回折と応力測定
第6章 直接法
第7章 放射光による内部応力評価
付録A 楕円近似について
付録B 2次元線形補間

説明

機器の安全を確保するためには,外力と内力に基づいて設計,製造および保全を行う必要がある.ゆえに,機器に生じる残留応力を評価することは,保全科学・技術においてきわめて重要である.にもかかわらず,残留応力により思わぬ欠陥が生じ,安全性に問題が生じた例は少なくない.その原因は,残留応力の軽視だけでなく,残留応力測定の困難性にもある.残留応力が簡便で,かつ高い信頼性で測定できるならば,機器の安全性に大きく寄与することは疑いない.また,ピーニングなどに象徴されるように,残留応力を積極的に利用して強度と信頼性を改善し,機器の保全に役立てる例もあることから,残留応力を非破壊的に測定する技術の発展が期待される.

そもそも残留応力は外力と大きく異なる性質を持つ.残留応力は,製造,加工,溶接などに起因するために,その複雑なプロセスを経て発生する.そのため,残留応力を前もって定量的に見積もることは容易ではない.その結果,残留応力を測定することが求められる.一方,残留応力を数値計算により評価する手法の発達もめざましく,残留応力のシミュレーションの活用は,今後も必要とされることは論を待たない.ただし,シミュレーションの判定や計算法の改善には,対象物の実応力を知ることは上可欠である.

対象物の実応力を非破壊的に評価する方法としては,結晶による回折現象を利用する方法がもっとも有力である.回折法は物理的根拠も明確で長い歴史を持ち,X線,放射光および中性子などの多様な光源を利用でき,その測定手法も多岐にわたる.現在,X線応力測定は均質等方多結晶体に対して確立しており,その標準は日本材料学会により制定され,一般的手法として普及している.しかし,均質等方多結晶の仮定が成立しない粗大粒(微小領域),集合組織および溶接材の応力測定については,古くからX線応力測定の「三大悪魔」と呼ばれ,X線応力測定の困難対象として未だに残されたままである.

X線応力測定が困難な原因は,その回折が連続環でなく斑点になることに起因する.回折斑点が現れると,もはや0次元および1次元検出器を利用したX線応力測定法は適用できない.どうしても2 次元検出器が必要となる.ゆえに,2次元検出器を利用した応力評価技術が確立するならば,測定困難材の壁を打破することも可能となる.2次元検出器を利用した応力測定は目新しいものではないが,その基礎的な手法や手続きが曖昧にされ,整理されていない.X線応力測定に関係する書物を見ても,回折装置を利用した応力評価についての記述であり,日本においては,2次元検出器によるX線応力測定に関する書物は見あたらない.

以上の状況に鑑み,本書では2次元検出器を利用したX線応力測定の現状をまとめた次第である.従来から提案されているcos α法や2D法に加え,直接法や回折斑点追跡法などの新しい測定方法についても詳しく述べている.また,粗大粒や溶接材の具体的な問題を示し,今後の課題について整理した.

平成24年10月,残留応力評価分科会が日本保全学会に設置され,その後,分科会委員を募り,平成27年3月までの約2年間にわたり,2次元検出器によるX線応力測定の技術について研究活動を展開した.その委員である著者らは,各界でX線応力測定の研究と技術開発に携わってきたものと自負している.その分科会活動を総括し,平成27年3月末に報告書としてまとめた.その成果を広く共有するために,この報告を基に本書を執筆した次第である.本書が,2次元検出器を利用した応力評価の一助になれば幸いである.なお,本書は日本保全学会の保全学シリーズの一つとして刊行するものである.日本保全学会の研究活動が,保全学シリーズとしてまとめられ,発展することを期待したい.

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