作物生産からみた米の食味学

2,200 (税込)

米の食味を作物生産として捉えるという視点から,栽培環境条件と食味との関係に焦点を当てて試験研究

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編著者:
判型 A5判
第1版
ページ数 141
発行日 2012/12/20
ISBN-13 978-4-8425-0508-4 C3061
ISBN-10 4-8425-0508-7
JAN 1923061020000
図書館: カーリル
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目次

第1章 米の食味
第2章 米の食味評価
第3章 栽培環境と米の食味
第4章 直播栽培と有機栽培における米の食味
第5章 稲体からみた米の食味
第6章 気象災害における米の食味
第7章 貯蔵米およびブレンド米の食味
第8章 産地別の米の食味
第9章 米の食味からみた品種の適応性と産地の適格性
第10章 今後の米の食味研究に向けて
引用文献
索 引

説明

米の品質(外観品質と食味)の良否は,流通・消費過程において商品性を左右する重要な資質である.特に現在の米市場において外観品質と食味が重視されている中で,食味が良いということは,水稲品種が具備すべき重要な農業形質の一つになっている.さらには,米の品質の向上は売れる米づくりを通して水田を守り,産地の稲作振興を図っていく上で大切な課題でもある.このため,生産現場では風土の違いを活かした良食味米生産に励んでいるところである.食味という形質は決して飽食の結果として求められているものではなく,人種,気候および土壌といった総合的な風土に反映された嗜好性に基づく食文化であると著者は思っている.

現在,米生産現場においては,地球温暖化による水稲の生育期間中の気温上昇などによって作柄の不安定化に伴う品質の低下が顕在化すると共に,食味の低下も懸念されるところとなり,米農家に深刻な影響を与えている.健全な米づくりとは品質と収量性とが両立していることであり,決して食味を含めた高品質性が収量性と相反するものではないと確信している.品質と作柄が不安定な今日こそ,この考えを前提とした外観品質・食味に関する学術の発展が望まれる.

日本人が主として調理加工して食する場合の米の食味評価とは,人間が炊いたご飯を食べて美味しい,美味しくないを判断することである.そこに人間の感覚や感情が関係する嗜好性が伴うため,食味の科学的な究明には困難さが伴う.そうした中,統計的手法に基づいた食味官能試験方法や機器分析による理化学的特性の測定法の開発などが着実に進められ,米の食味についての研究成果が蓄積されてきている.しかしながら,日本においては,米の食味についての書は一般的な読み物や解説書の類に限られたものが少しあるだけで,教科書や学術書としてひもとく書はないといってよい.こうした中で,あえて不備を知りつつ出版するのは,米の食味に関する理解の普及と研究の進展を強く望むと共に,これまでの研究実績を踏まえて,米の食味研究に関しては日本がリーダーシップを発揮して,つねに世界に向かって情報発信しつづけてほしいという念願からである.

本書の内容は食味を作物生産として捉えるという視点から,主として栽培環境条件と食味との関係に焦点を当てて試験研究を遂行したもので,かなり個性の強いものとなっている.どの内容も実際に圃場レベルで悪戦苦闘して得た結果である.そして,本書で記述している食味の値は,科学的な食味官能試験の結果で裏打ちしたものである.

本書が米生産者,農業指導者に,また育種および栽培分野に携わる方々の研究に活用されれば幸いである.さらには,作物学,育種学,食品栄養化学,加工・調理学,分子生物学等を包含する米の食味に関する学際的研究の橋渡しになれば望外の喜びである.

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