目次
1. 産業用車両の概要
1. 1 バス・トラック
1. 2 建設機械
1. 3 農業機械
2. 産業用車両に用いられるディーゼルエンジン
2. 1 用途ごとの特徴と使用条件
2. 2 排出ガス規制とエンジン構造
2. 3 排出ガス規制と燃料の動向
2. 4 エンジン潤滑系統
2. 5 主要潤滑部品
2. 6 ピストンおよびピストンリングのトライボロジー的課題
2. 7 エンジン油規格
2. 8 潤滑油基油と添加剤
2. 9 エンジン油品質各論
3. 油圧機器
3. 1 建設機械の代表機種の油圧回路
3. 2 農業用トラクタの油圧回路とコンポーネントの特徴
3. 3 建設機械と農業機械の静圧式無断変速機HST
3. 4 主要部品の潤滑面での特徴
3. 5 油圧ポンプのトライボロジー
3. 6 作動油の品質とその動向
3. 7 作動油品質の各論
4. パワートレイン
4. 1 産業用車両のパワートレインの概要
4. 2 バス・トラックのパワートレイン
4. 3 建設機械のパワートレイン
4. 4 農業機械のパワートレイン
4. 5 湿式摩擦材のトライボロジー
4. 6 歯車のトライボロジー
4. 7 パワートレイン潤滑油の種類
4. 8 パワートレイン潤滑油の規格
4. 9 パワートレイン潤滑油の品質
4.10 パワートレイン潤滑油の基油と添加剤
5. 産業用車両のグリース
5. 1 グリースとは
5. 2 グリースの潤滑機構
5. 3 グリース性能と添加剤成分
5. 4 産業用車両グリースの規格
5. 5 産業用車両グリースの最近の動向
6. 潤滑管理
6. 1 産業車両の潤滑管理の動向
6. 2 潤滑油の劣化に対する管理
6. 3 オイル分析サービス
6. 4 車載オイル劣化センサ
参考・引用文献
索引
説明
本書は産業用車両のトライボロジーについての解説をするものである。産業用車両という言葉はあまりにも広範囲な内容を含み、トライボロジーの点から見て決して同列に扱い得るものばかりではない。その為,今回は、比較的共通部分が多く、技術的に一貫した流れで解説できるものとして,バス・トラック、建設用車両、農業車両に絞った。
トライボロジーの観点から見ると、この領域における技術的な問題はかなり複雑で難しい要因が数多く存在する。先ず、この領域における技術的な要因の最も大きな特徴は、高圧化であろう。パワーデンシティを上げるために油圧機器はどんどん高圧化、小型化されている。それに伴い、油膜構成などの点で、トライボロジー的な課題がどんどん難しさを増しているといえる。
次に、産業用車両は当然ながら環境対策が要求される。排ガスの問題、土壌や水質汚染などの汚染の問題など、潤滑油にも耐環境性が求められる。耐環境性と潤滑油に本来求められる各種特性値とのトレードオフの問題をいかにクリヤするかが問われる。そして、省エネルギー・省資源などの本質的な問題にいかに対応してゆくか。低燃費、低摩擦及びロングドレン化がトライボロジー上の大きな課題としてのしかかってくる。
もう一つ忘れてならないのは、産業用車両の多くが使用される環境は、決して清浄環境ではなく、まさに粉塵環境で使われることを前提にしていることであろう。例えば転がり軸受の寿命を制するのは潤滑油の清浄度であることが知られているように、トライボロジーにとって粉塵環境は最も苦手とする環境の一つである。
このように、トライボロジーにとって産業用車両は、過酷環境におけるトライボロジーの代表的な領域であり、この領域のトライボロジー技術が確立されるということは、トライボロジーの発展に大きな進歩が得られることを意味する。
本書の執筆者は、それぞれの分野において経験豊富な技術者であり、時代の要求に対応してきた実績を持つ技術者達である。潤滑油等の規格化の歴史的な流れや、技術開発の過程における豊富なデータの提示から、技術の流れに対する考え方を理解しやすい記述で解説している。トライボロジー技術についても、産業用車両という領域におけるトライボロジー技術の考え方が解説されているが、このような解説はトライボロジーの実践的なデータとして非常に有用なものである。
本書は部品製造や車両メンテナンスに関わる技術者、あるいは自動車、フォークリフトや鉄道車両などに携る技術者にも参考になると考えている。このため用語についてはトライボロジー辞典を基準として、各専門分野特有の用語はあえて一般的あるいは共通の用語に置換えている。本書を幅広い産業界や学界の方々に読んで頂いて産業用車両のトライボロジーを理解して頂き、産業用車両の一層の発展に役立つことを願っている。
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