目次
序
1 ウシの起源と多様性
2 動物応用科学における生殖工学・発生工学分野の発展~受精機構の解明を目指して~
3 遺伝子改変動物の作出と応用
4 細胞の分化と再生医学? ― 動物工学分野の挑戦 ―
5 ヒト生殖補助技術の展開
6 アミノ酸食品の新展開
7 ヒトが肉を利用した歴史と食肉加工技術の発展
8 乳酸菌・ビフィズス菌のヒトと動物の健康への貢献とゲノム解析情報の応用
9 牛にやさしい飼育管理技術とは? ― 家畜行動科学の視点から ―
10 卵巣のトキシコロジー
11 動物は色や形をどのように見ているのか? その行動学的アプローチ
12 シカの生態学の展開:「リンク学」の提唱
13 犬を使った野生動物の被害対策 ベア・ドッグの導入事例から考える
14 動物の素顔を追う? ― ヒトは動物を誤解する動物である ―
15 野生動物との共生? ― その可能性と方向 ―
16 畜産と畜産物フードシステム ― 私たちの食と暮らしとのかかわり ―
17 ニュージーランドにおける草地酪農システム
あとがき
説明
家畜を適切に扱う、すなわち「家畜を飼う」ことは、非常に奥が深い。適切に家畜を飼育すること自体が、家畜生産の効率に直結する。また、その畜産物の生産性を改良するには、家畜を育種し、改良することが重要であり、家畜の生産性の効率化や効率のよい育種には、人為的な家畜繁殖制御技術も重要である。さらには家畜に必要な栄養素を満たした飼料を作り、これを適切に与える飼養管理技術もおろそかにできない。そして、家畜の生産性を十分に発揮される環境を保ち、かつその環境を保全しなければならない。また、家畜の生産性を低下させる疾病を予防・治療することも重要である。生産された畜産物が、消費者に安全で、かつ安定的に供給されなければならない。さらには畜産物を美味しく食べられるように加工するにも様々な技術を要する。加えて社会活動として重要なのは、生産者の畜産経営や畜産物の価格や流通に関する経済学的な要因である。このように畜産学は、非常に多様な領域を含んでいるという特性があり、同時に非常に重い社会的な使命も担っている。
第二次大戦後の高度成長時代の日本では、畜産物の需要が爆発的に増加し、畜産学・獣医学はその安定的な供給に応えてきた。そして成熟社会を迎えている現在の日本では、畜産は依然として食料生産においては重要ではあるが、その生産は徐々に減少している。一方、現在の日本社会には、「少子高齢化」、「食品の安全」、「地球温暖化」、「環境破壊」、「種多様性の維持」、「先端医療」、「心の安定」、に代表されるような様々な問題が存在する。そして家畜生産をベースにした様々な畜産学・獣医学の「知」の蓄積は、これらの諸問題にも取り組み、従来の目的以外にも展開され、人と動物との共生を目指して、人類の健康を含めた福祉のためにダイナミックに「動物応用科学」として発展されている。
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