目次
第1章 ものづくりにおける非破壊評価・検査
1 自動車のものづくりにおける非破壊評価・検査の必要性
2 試作開発段階における非破壊評価
3 インライン非破壊検査
4 抜取り検査への非破壊検査の適用
5 金型・工具類の非破壊評価・検査
6 非破壊評価・検査を意識した製品設計
7 自動車部品と大型構造物の超音波非破壊検査の比較
第2章 ものづくりにおいて評価すべき損傷・欠陥と材料特性
1 欠陥
2 材料特性
第3章 現在の非破壊検査法
1 非破壊検査の定義
2 主な非破壊検査・評価法
3 従来超音波非破壊検査法の不得意分野
第4章 材料特性および微細損傷検出のための超音波伝搬の基礎
1 超音波(弾性波)を用いる検査・評価分野
2 一次元平面波の伝搬と特徴量の定義
3 固体中を伝搬する各種の波
4 波の伝搬速度
5 界面での波の反射、屈折、モード変換
6 界面での波の反射率・透過率
7 超音波伝搬の数値シミュレーション
第5章 超音波測定系
1 超音波の発生と送信
2 超音波の受信
3 超音波特徴量の抽出
4 測定結果の表示
第6章 超音波測定装置
1 超音波発生装置
2 超音波探触子
第7章 微細欠陥・損傷の検出画像化技術
1 超音波走査画像化装置
2 超音波顕微鏡
3 フェイズドアレイ装置
4 3D超音波検査装置
第8章 非線形超音波法
1 非線形超音波法の必要性
2 高調波を用いた密着き裂の検出および材料特性評価
3 非線形超音波(高調波)の発生機構
4 高調波測定装置
第9章 材料特性の非破壊評価
1 音速測定による等方性材料の材料特性評価
2 空気超音波法による高減衰材料の特性評価
3 複合材料の異方弾性係数測定
第10章 表面層の特性評価
1 弾性表面波の基礎
2 水浸表面波速度測定法
3 表面層の特性評価
第11章 非線形超音波による材料特性と微細欠陥評価
1 体積平均的材料特性の評価
2 高調波を用いた内部極微細すき間・損傷・介在物の検出
第12章 き裂面の画像化
1 集束横波後方散乱波法
2 非線形集束横波後方散乱波法
第13章 将来展望
索引
説明
欠陥検出を目的とする超音波探傷以外に、材料特性や微細な介在物、ボイド、マイクロクラックなどの検出・評価を目的とする超音波非破壊材料評価研究が大学・研究機関で進められている。しかし、産業界における超音波材料評価の利用は、鉄鋼業界を除き、まだ一般的でない。また、そのための入門的図書も極めて少ない。近年欧米では、ほぼ毎年超音波を含む非破壊検査・評価に関する図書が出版されているが、日本では2000年以降2冊しか出版されていない。
このような状況を考慮して、本書では、ものづくり、特に自動車およびその部品メーカーの開発・生産技術者、材料強度、特に材料特性の非破壊評価・検査に関心を持つ機械系学生・大学院生を対象として、超音波非破壊検査・評価技術の最新技術、自動車部品の開発および製造工程に超音波非破壊検査を導入する際に必要な超音波計測技術の基礎、材料特性の超音波非破壊評価の基礎技術を紹介する。
自動車関連企業において、開発・試作段階、抜取り検査あるいは生産ラインに超音波非破壊検査装置を導入する際には、超音波機器メーカーと相談して、最適設備と関連ソフトウェアを購入することになろう。しかし、製品のモデルチェンジに対応する最適測定条件の設定、それに対応するソフトウェアの作成などについては、個々の製品の開発技術者あるいは生産技術者の主導が不可欠であり、そのためには超音波非破壊検査・評価の基礎概念と基本技術が必要となる。
本書では、教科書形式(基礎理論→各論→適用例)の記述ではなく、開発・生産技術者にとって必要な問題解決形式、すなわち、解決したい課題→その解決に有効と考えられる技術の選択→技術の基礎概念→適用例の順序で記述する。 第1章では、ものづくり、特に自動車用構造部品製造における非破壊評価・検査が要求される分野、第2章ではそこで評価・検出すべき対象、第3章では、現在の超音波非破壊試験(評価・検査)技術の概要、第4章では超音波計測の基礎となる超音波伝搬理論の概略、超音波検査・評価技術の基礎、第5章では超音波測定系、第6章ではそのための測定機器、第7章では小物部品接合部の微細損傷や弱結合部の検出に不可欠な微細欠陥の画像化技術について述べる。第8章では、密着き裂や介在物を高調波(入射周波数の整数倍の周波数を持つ波)を用いて検出・画像化する新しい超音波技術を紹介、第9章以降では、自動車部品製造に関連する、超音波材料特性評価、微細損傷・欠陥評価、き裂の画像化などの超音波非破壊評価例を紹介する。
ただし、高調波画像法、非線形超音波測定法、空気超音波法などは研究室レベルでは再現性のある結果が得られるようになった段階であり、産業分野に適用するためには、測定方法、測定装置、標準試験片など、多くの課題を解決する必要がある。前述のように、薄肉の自動車部品に対し、数mmより大きな欠陥検出を目的とする従来の超音波探傷法を適用することは極めて困難であるので、本書ではこれに関する説明を省く。関心のある人は第1章の参考文献を参照されたい。
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