目次
第1章はじめに
1.1圧電セラミックスの歴史
1.2圧電セラミックスの現状
第2章セラミックスと製法
2.1原料粒子の作製
2.2製造プロセス技術
第3章無鉛圧電セラミックス
3.1チタン酸バリウム系
3.2ビスマス系
3.3ニオブ系
第4章無鉛圧電セラミックスの特性向上
4.1ドメインエンジニアリング
4.2欠陥制御による材料設計
4.3粒界制御による特性向上
第5章センサ・アクチュエータへの応用
5.1圧電効果
5.2圧電アクチュエータ
5.3弾性表面波・超音波モータ
5.4圧電振動子
5.5超音波トランスデューサ
5.6圧電トランス
5.7圧電センサ・ジャイロ
5.8将来展望
参考文献
索 引
説明
近年の科学技術の発展は、人類の生存の基盤を危うくさせるほど有限な地球環境に異変を与えるまでに至った。すなわち、大量生産、大量消費、大量破棄の社会システムから得られる利便性・快適性とは裏腹に、地球温暖化、海洋汚染、酸性雨、有害物質の偏在化などの地球規模での環境問題を引き起こし、住みよい地球にならないことが明らかになった。これらの問題は、主にエネルギー消費による二酸化炭素(CO)の排出と有害廃棄物によるものである。これらを軽減するため、環境持続型の革新的科学技術が強く求められている。
そこで、エコマテリアル(人にも環境にもやさしい高品質な物質・材料)の必要性が認知されるようになり、電気・電子機器産業では、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)、六価クロムなどの有害物質を排除する動きが世界的に高まっている。特に欧州では、電気・電子機器に含まれる有害物質が土壌、水、大気を汚染するリスクを最小限にくい止め、健康と環境を保全するため、有害物質の使用を禁止する「特定有害物質制限(RoHS)」が2006年7月から施行された。なお、廃棄物予防とリサイクル・再生を目的に、すべての家電・電子製品を対象にして、メーカーに廃品回収を義務づける「廃電気・電子機器回収指令(WEEE)」も2005年8月から施行されている。
一方、ディーゼルエンジンでは、燃料を高圧で保持するコモンレールシステムを用いることにより、燃料を高圧・高速で噴射し、完全燃焼させて、省エネルギー化と排気ガスをクリーン化する技術が開発された。これは、一見、環境・人にやさしい技術であるが、この燃料噴射装置(インジェクタ)に使われている高性能圧電セラミック積層アクチュエータには鉛を多量に含んでいる。しかし代替品がないため、当分の間、欧州の制限(RoHS)から除外されることになった。
このような状況で、高性能圧電セラミックスの無鉛化が、世界中の圧電セラミックスの研究者・技術者たちの関心を集めている。最近、ナノテクノロジーや粒子配向技術で無鉛化の可能性が見えてきた。しかし、経済的な大量生産技術を開発できるかどうかが今後の大きな課題である。
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