土地利用計画論

3,300 (税込)

農業経済的見地から効率的な土地利用計画の方法論を述べ、各農業地域と所得との関連性を解説。

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判型 A5判
第1版
ページ数 190
発行日 2005/11/30
ISBN-13 978-4-8425-0378-3 C3061
ISBN-10 4-8425-0378-5
JAN 1923061030009
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目次

序章 本書で扱う問題の所在
1.農村の土地利用問題:2.研究の課題
第1章 方法論の整理-土地利用計画における農地の生産性把握について-
 はじめに
 総合的な視点からの農地の生産性の把握方法論(1.土地分級に関する方法論上の概念整理:2.詳細な実態分析を通じた農地の生産性の把握:3.土地分級の定量化の試み:4.実証分析による土地利用モデル:5.規範分析による土地利用配分の導出:6.農地の生産性把握方法論の整理:7.分析枠組みの採用)
 規範分析による農地の生産性把握に関する整理(1.規範分析による農地の生産性把握の枠組み:2.土地単位内における技術係数の設定に関する議論:3.土地単位間の空間配置による影響に関する議論)
 分析課題の構成
第2章 都市農地の保全計画-外部不経済と移動効率の影響を考慮して-
 背景と課題
 分析方法(1.事例地域:2.営農類型の設定:3.外部不経済および移動に関する係数設定:4.線形計画法のフレームワーク)
 分析(1.最適化結果:2.農業生産からみた生産緑地区画別の保全基準)
 結 語51
第3章 都市近郊における宅地化・耕作放棄発生の影響の予測
 背景と課題
 分析方法(1.分析事例:2.非農業土地利用の把握方法:3.現状における問題発生状況の把握(農家側が受ける外部不経済):4.現状における問題発生状況の把握(住民側が受ける外部不経済):5.農外土地利用と農地の接触の増加に伴う問題発生の予測)
 分析(1.非農業土地利用の把握:2.現状における問題発生状況の把握(農家側):3.現状における問題発生状況の把握(地域住民側):4.耕作放棄地の増加に伴う農業側の問題発生の予測:5.農-住混在の増大に伴う農業側の問題発生の予測:6.地域住民側の問題指摘確率の予測)
 結語
第4章 都市近郊平坦地域における水田利用計画-水田水利施設の維持管理費用を考慮した地区分級モデル-
 背景と課題
 分析方法(1.水利施設の概況と維持管理コスト:2.都市近郊水田における生産性の把握:3.地区分級モデルの構築:4.シナリオの設定)
 分析(1.アンケートによる生産性の把握結果:2.地区分級の実施:3.地区別の水田利用の決定において水利施設維持管理を考慮しない場合との比較)
 結語
第5章 中山間地域の農地保全計画-耕作放棄による外部不経済の影響を考慮した区画単位の分級モデル-
 背景と課題
 分析方法(1.事例地域:2.期待所得圃場分級の構成:3.圃場単位の土地条件の推計:4.線形(整数)計画法による集落農業所得の最適化:5.計算結果の適用と考察)
 分析(1.圃場別収量の推計:2.圃場別労働時間の推計:3.線形(整数)計画モデルによる期待所得圃場分級の実施:4.結果の適用と考察)
 結語
第6章 中山間地域における農地集積計画-地区レベルの規範モデルによる大規模水田経営の成立可能性の検討-
 背景と課題
 分析方法(1.線形計画モデルの構築:2.係数の設定:3.分析シナリオの設定)
 分析(1.分析結果:2.直接支払制度の影響:3.圃場条件別の集積状況)
 結語
第7章 今後の課題と展望
 本書の要約(1.本書の到達点:2.土地利用計画論としての体系化)
 近年の注目すべき動向-土地利用との関係から-(1.地域住民参加型の農地保全:2.新たな土地利用形態の模索:3.農地保全の政策的実現手段:4.IT技術を活用した農地保全)
 今後の課題(1.規範分析として備えるべき要件:2.実証研究との連携:3.計画手法、政策評価手法としての要件:4.新技術との連携)
論文初出一覧:引用文献
あとがき

説明

列車の車窓や街道から眺める田園景観の変化を感じることは、旅行の醍醐味の一つであろう。いくつか地図を広げてみれば、地域により、国により、様々な農業土地利用が行われていることを空間的に知ることができ、想像力をかき立てる。このような景観や土地利用を形づくるのが、その地方の農業生産活動といえよう。もとより、農業経営にとって土地は必要不可欠な生産要素であり、土地利用を計画的に行うことにより、継続的かつ効率的に生産物を生み出すことが可能となる。一方で、近年は、農村の土地利用を維持するために、地域条件に適した農業生産が行われることが期待されている。

本書の目的は、農業経済的に見た、土地利用の効率的な配置を知るための土地利用計画方法論の構築である。いかなる土地利用の空間的配置を行うことが、農業生産の上で最も効率的であるかを知ることは、一義的に農業の競争力の向上に貢献するのみならず、農地保全をより効果的に行うためにもきわめて重要な課題である。それは、農地に何を作付するのかという選択だけにとどまらず、都市的土地利用や粗放的土地利用との関係性を考慮して把握されなければならない。

こうした課題に取り組んだ研究蓄積として、農業から将来に渡って得られると予想される期待所得を基準として、農地利用の優先順位を決定する、期待所得土地分級論の流れがある。本書は、土地利用計画論の完結編にはほど遠いが、既往の研究の到達点を踏まえつつ、その現代的な展開を試みたものである。

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