説明
熱帯は、かつてその開発のポテンシャルの大きさによって先進諸国の関心を集めたが、今日では熱帯にある120以上もの発展途上諸国の環境をいかに保全するのか、またそこに住む30億をこえ、なおも増え続ける人々の食料をどのように確保していくのか、など喫緊の諸課題を抱えて世界の注目するところとなっている。そのためわが国においても、政府の開発援助や民間のボランティア活動を通じて、熱帯の人々とともに働きながら熱帯の環境や食料問題に密接に関わって活動を続けている人の数は増え続けている。
人々が熱帯の農業や農村を対象として活動する場合、それぞれの専門領域の中だけでも、日本では経験しなかったような多くの問題に遭遇すると思われるが、それ以上に専門外の領域でのいろいろな知識の必要性を感じることが多いに違いない。日本にいれば、周囲にいる先輩・同僚に教えを請い、あるいは自ら多くの文献や資料を渉猟して問題を解決することができるであろうが、熱帯ではそれもままならない状況におかれることがあるであろう。「熱帯農業事典」はこういう状況の中で、問題となる事象への最初の接近を可能にすることを目的として編集された。もっとも、食料と環境、農業と農村といった極めて広範な領域に関わる問題のあらゆる局面を、ハンディーな本の中で相当な深さをもって満遍なくカバーすることは実際上不可能である。そのことを承知しながら、編集委員会では、熱帯の現場に置かれた個々人が直面するであろうニーズに、できるだけ応え得るような内容を盛り込むべく努力を重ねた。この意図が十分に貫徹された事典となっていることを願っている。
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