目次
1章 日本農業をとりまく環境(1.はじめに、2.日本の土壌環境、3.世界の土壌環境、4.大気環境、5.水環境)、
2章 持続的食料生産と肥料(1.世界における人口増加、2.世界における食料の供給、3.利用可能な農耕地面積、4.わが国における食料自給率、5.肥料の役割、6.日本と他の国との肥料形態の差異、7.肥料生産とエネルギー、8.肥料原料、特にリン酸原料の有限性、9.有機性資源のリサイクリング、10.肥料生産の持続性)、
3章 輸入食飼料と窒素循環(1.はじめに、2.わが国の食料システムにおける窒素の循環、3.地域における窒素循環、4.食料の世界貿易と窒素循環、5.歴史を概観する、6.窒素循環からみた農業のあり方)、
4章 家畜排泄物の環境保全的利用(1.はじめに、2.家畜排泄物の資源量としての推定、3.わが国農地の家畜排泄物の負荷量と受容量、4.流通している堆肥類の品質の状況、5.家畜ふん堆肥の施用効果、6.未熟な家畜ふん堆肥の過剰施用による影響、7.家畜ふん堆肥の環境保全的施用量、8.おわりに)、
5章 窒素負荷を軽減する新施肥法(1.新しい機能をもつ肥料、2.水稲の省力・環境保全的施肥管理、3.露地野菜の省力・環境保全的施肥管理、4.施設野菜の省力・環境保全的施肥管理、5.野菜の品質と窒素施肥、6.果樹類の省力・環境保全的施肥管理、7.茶の省力・環境保全的施肥管理)、
6章 窒素揮散と施肥管理(1.はじめに、2.大気中の主な窒素化合物、3.農耕地に投入される窒素、4.亜酸化窒素と一酸化窒素の生成機構、5.栽培期間中のガス発生の経日変化、6.日本の農耕地からの亜酸化窒素の発生量、7.亜酸化窒素と一酸化窒素ガスの発生要因、8.発生削減技術、9.今後の課題)、
7章 持続的農業の展開のために(1.高齢化と農業形態、2.自給率向上は輸入の削減から、3.水田こそ持続的農業の典型、4.日本型食事と栄養バランス、5.環境保全型施肥技術、6.畜産農家と耕種農家との連携、7.有機農産物、8.土地利用率の向上、9.物質循環のすすめ)
索引
説明
日本の食糧自給率はカロリー計算で40%以下までに低下し、これは主要先進国で最低となり、農耕地は1人当たり400平米とこれも最低である。 日本には470万頭の牛と990万頭の豚が飼われているが、これに必要な飼料の大部分はアメリカに依存している。これらの家畜の肉を生産するのに要するエネルギー効率は、穀物を直接摂取するのに比べて1/11~1/7となる。このように海外に依存している畜産は、局所的に大量の排泄物を生じ、その処分が大きな問題であり、それが水域等の富栄養化の原因となっている場合もある。 農家の総所得の内、農業所得はわずか14%であり、農業所得の低さが際立っている。これが農業離れを助長し、農業従事者の高齢化を招いている大きな要因になっていると思われる。 現在、地球上の人口は年間8,000万人増加しており、この人口を養う食料を生産するために、化学肥料は不可欠な資材であるが、過剰の肥料が地下水や河川水に移行し、閉鎖水域の富栄養化、地下水汚染の一因となった。そして、化学合成資材はすべて悪という非科学的な風潮がまかり通り、化学肥料が批難されている。 また、農業環境は地球温暖化というこれまで経験したことのない事態に遭遇することとなった。これは地球全体の食料生産に関わる問題である。 以上のように、日本農業が抱えている問題は環境面から見ただけでもきわめて多岐にわたる。本書はこれらの問題について研究当事者の反省も含めて分かりやすく解説して、その対策を提案して環境保全型農業の推進に寄与することを目的としている。すなわち、農業をめぐる環境問題、輸入食飼料と環境負荷、食料生産における肥料の必須性、日本の畜産問題、環境負荷軽減のための肥料および施肥技術等を内容としている。特に環境負荷軽減施肥法では現場における施肥の実態、機能性肥料の形態と合理的施肥技術、施肥と作物の品質等につき各作物毎に具体的にそれぞれの項目について詳述した。さらに持続的農業の展開に向けて、土地利用の向上、食料自給率の向上と輸入食飼料の削減、水田の働きの評価、有機農産物の規格化および生産性、施肥技術の高度化等について提言を行っている。 本書は、大学農学部・生物生産学部学生、農業大学学生、農業高校の先生の参考書としてのみならず、農業関連試験研究機関・行政職員、農業改良普及員、農協指導員および農家のマニュアルとして最適な書である。
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