目次
展望・総説・総論
構造解析における不確定性と荷重の推定(1)
宇宙航空研究開発機構 航空技術部門
中村俊哉
連載講座
カルマンフィルタとその周辺および応用(2)
確率統計の基礎知識(1)
立命館大学 名誉教授
杉本末雄
繊維強化複合材料の損傷を考慮した力学解析(1)
損傷を含む積層板の剛性低下
東北大学 大学院工学研究科 助教
南雲佳子
九州大学 大学院工学研究院 助教
小野寺壮太
東北大学 大学院工学研究科 教授
岡部朋永
機械構造用金属材料の超高サイクル疲労(45)
6. VHCF-2~VHCF-4の10年間の研究動向(25)
立命館大学 名誉教授
酒井達雄
CFDの基礎講座(追補3)
流体力学の保存則とシステム方程式
慶應義塾大学 名誉教授
棚橋隆彦
植物の葉や花に関する力学的研究(5)
オジギソウの小葉にみられる折り畳み・展開構造(2)
(株)衝撃工学研究所 執行役員
大阪大学 名誉教授
小林秀敏
脱炭素社会を実現するための材料複合化技術(6)
セラミックス基複合材料(CMC)と耐環境コーティング(EBC)その3
一般財団法人 航空宇宙技術振興財団 評議員
伊藤義康
新しいエネルギー基本計画と近年の台風災害の考察(2)
太陽光発電の導入状況と気象予報
産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所
再生可能エネルギー研究センター
太陽光システムチーム 主任研究員
大竹秀明
特別講座:機械系大学院入試問題演習(19)
オイラーの運動方程式の優しい導出について(5)
神奈川大学 名誉教授
伊藤勝悦
コラム:一杯のコーヒーから(185)
Natural Intelligence その6「Communication」
Stanford University visiting professor
慶應義塾大学 顧問
福田収一
新刊紹介
梶島,岳夫,1958-
出版社:森北出版
定価:3,600円+税
発売日:2024年12月18日
ISBN:978-4-627-67691-6
工学・工業界ニュース
説明
記事ピックアップ
「構造解析における不確定性と荷重の推定(1)」
構造物の疲労破壊は特に産業革命以降大きな問題として認識され、研究されてきた。現代でも疲労破壊を完全に防止する技術は確立しておらず、事故も発生している。疲労破壊に限らず、破壊の予測を困難にする要因として、実際の構造物における材料特性や寸法の不確定性、残留応力など製造プロセスに起因する不確定性、さらに、稼働中の環境や各種荷重の予測が難しいことがあげられる。これは破壊そのもののメカニズムの理解とは別の問題である。材料や構造の振動、変形や強度の研究では比較的規則的な負荷を用いた実験や解析がおこなわれる。これは研究対象とする現象や特性を抽出し、理解するために必要な手法といえる。疲労など耐久性を調べる試験では限られた期間で結果を得るために加速試験もおこなわれる。
しかしながら、現実には荷重発生要因は多様であり、実験で用いられるものよりも複雑である。また、設計・開発時には運用条件を模擬した試験や解析がおこなわれるが、材料特性、製造、運用条件や環境には不確定性も含まれることから系の応答評価もそれを考慮することが望ましい。例えば、自動車や航空機などは、運用中に構造が受ける荷重は操縦や運動、路面や風(航空機の場合は特に突風)の状態によるものの、これらは事前に正確に予測することはできない。宇宙機では運用条件を地上試験で十分に模擬できず、解析による推定に頼らざるを得ない場合がある。例えば、宇宙空間から大気圏に突入する機体には空力加熱のために極めて高い耐熱性が求められるが、構造への熱荷重(加熱率)や、用いられる耐熱材や断熱材の物性の不確定性は大きい。
そこで著者らは、荷重(機械的、熱的)の不確定性の影響や、センサ情報から実働荷重を推定する技術の基礎的研究をおこなってきた。後述するように、系の不確定性を考察することはそこで起きている現象の理解を深めることにも通じる。本稿では著者らがおこなった解析や実験の概要を、確率論的構造解析や逆解析の基本を交えながら、2回にわけて紹介する。
宇宙航空研究開発機構 航空技術部門
中村俊哉
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