目次
Ⅰ.21世紀の食料生産と農業環境(1.はじめに、2.地球環境破壊に見るマテリアルバランスの崩壊、3.環境保全型(リサイクル)経済社会への政策課題)
Ⅱ.21世紀の食料需給(1.はじめに、2.悲観論、3.楽観論、4.楽観論と悲観論をどう考えるか)
Ⅲ.地球温暖化による作物生産地域変動(1.はじめに、2.作物生産にかかわる主な要因、3.栽培適地・可能地域の定義、4.栽培適地・可能地域の推定と環境変化に伴う変動予測の方法、5.現在の主要穀類等栽培適地と可能地域、6.地球温暖化後の主要穀類等栽培適地と可能地域、7.おわりに)
Ⅳ.気候変動と異常気象(1.はじめに、2.ENSOによる気候変動と異常気象、3.太陽活動による気候変動と異常気象、4.火山大噴火による気候変動と異常気象、5.まとめ)
Ⅴ.地球温暖化と農業―IPCC第2次評価報告書より―(1.はじめに、2.IPCCの歩みと役割、3.第2次評価報告書、4.農業に対する地球温暖化の影響、5.農業影響に対する適応策と対策、6.今後の温暖化問題)
Ⅵ.地球環境変動と作物生育予測(1.はじめに、2.IPCCWGIIレポート、3.影響予測法とその結果、4.影響予測の問題点とその解決方向、5.まとめ)
説明
開発途上国を中心として世界人口の爆発的増加が起きている。これを引き金に21世紀における世界の食料、環境、エネルギーなどの問題の深刻化が懸念されている。また、こうした問題に追い打ちをかけるものとして地球の温暖化が話題になっている。これらの問題には不確実性が多分に存在するが、確実に言えることは、これから迎える21世紀には人類を始めとする生物の生息の場としての地球の諸条件は、現在よりも悪化するし、これまでと同じエネルギーや資源の浪費型の開発を行い続けていれば、事態の悪化が加速されるということである。農業環境技術研究所は、農業と環境とのかかわりに関するさまざまな問題を研究している。その中の一つの重要な研究テーマが農業と地球温暖化のかかわりである。温暖化に伴う日本と世界の食料生産がどう変化するかに絞って、これまでの研究の現状と今後の問題を整理しようとしたのが本書である。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第二次評価報告書では世界的にみれば、温暖化に伴う世界の食料生産力はさほどの影響を受けないとしているが、それはあくまでも平均値であり、生産力の予測を作物成育の気象条件面だけから行ったものに過ぎないといえよう。例えば、温暖化すればシベリアでも作物生産ができる条件が生まれるとしても、凍土が融けた排水不良の土壌であれば、排水整備がなされなければ実際の作物生産は無理である。このように現在の温暖化に伴う食料生産の予測の精度はまだまだ低いのが実態である。本書は1996年に農業環境技術研究で開催した農業環境シンポジウム「21世紀の食料確保と農業環境」をベースにまとめたものである。
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