モザンビーク北部における農業経営〔英文〕
 
 
 
山田隆一・小出淳司・大矢徹治 共著
 

■定価(本体2,000円+税)
■A5判 80頁
■発行年月  2017.08
■ISBN 978-4-8425-0561-9

 
 
 
まえがき

 アフリカ大陸の人々にとって、貧困と飢餓の根絶は開発目標となっているが、サハラ以南のアフリカには、作物生産と市場経済強化における農業開発ポテンシャルを持つ国々がある。このポテンシャルを活用するために、モザンビーク共和国などの国々で、市場志向型農業の改善のための技術導入、調査が行われてきている。

 モザンビークはアフリカ大陸の南部に位置し、インド洋に面している。同国の農業は場所によって多様化しており、北部(とくに南緯13度と17度の間をナカラ回廊地域と呼ぶ)は、一般的に南部よりも農業のポテンシャルが高い。農家は、トウモロコシやキャッサバなどの自給作物を栽培する一方で、近年、収入を得るために換金作物を栽培し始めている。

 ProSAVANAプログラムは、日本・ブラジル・モザンビークの三角協力プログラムであり、包括的で持続可能な農業開発を通じ、ナカラ回廊地域の人々の生活を改善することを目的としている。 2011年に始まったProSAVANA-PIプロジェクトはその下で行われており、1)適切な農業開発モデルの確立を支援するために、自然条件および社会経済状況に関する関連調査の結果を組み込むこと、2)ファーミングシステムの改良、農業技術と農業資材を含む農業普及サービスへのアクセス、バリューチェーンシステム、農地の拡大などの適切な対策を通して農業生産性および生産を増加させること、3)収益性向上のための研究成果に基づいて農業生産の多様化を推進すること、4)農民主権を尊重しながら、自給自足農業から持続可能な農業に転換する機会を提供すること、などのアプローチをとっている。NTCインターナショナル(NTCI)と国際農林水産業研究センター(JIRCAS)所属の専門家からなる国際協力機構(JICA)プロジェクトチームは、ブラジル農牧研究公社(Embrapa)とモザンビーク国立農業研究所(IIAM)と共同で、自給作物と換金作物の両方を含む作付体系の研究を行ってきた。対象地域では、トウモロコシは自給作物とみなされる一方で、大豆は食用油の製造に利用され、その副産物の搾りかすは鶏の飼料として利用されるため、現金作物とみなされる。そのサプライチェーンを確立することで、ProSAVANAプログラムのミッションの1つである雇用創出が期待される。

 農業開発プロジェクトでは、対象地域の村や農家の状況を正しく理解することが重要である。そこで、私たちは、農業生態学的および土壌特性が異なる3つの地域(東部、中部、北西部)について、ナカラ回廊地域の農家世帯の社会経済的条件を調査・分析した。東部地域(ナンプラ州)は比較的暑く乾燥した砂質のアルカリ土壌が特徴である。中部地域(ザンベジア州)は特に丘陵地帯において肥沃な土壌とより高い降水量と日射量を有しており、生産ポテンシャルは、3つの地域の中で最も高い。マラウイと接している北西部(ニアッサ州)は高地であり、より酸性の強い粘土質の土壌を持つ冷涼湿潤な環境である。

 このプロジェクトの最終成果物として、意思決定支援システム(DSS)が作成される。このシステムは、異なる場所や異なる社会経済的状況にある農家世帯の作物生産と所得を最大限にするために、作付作物の最適な組み合わせを農民が導入するのを普及員が提案するのに役立つであろう。私たちは、DSSの一部となる作物モデルを構築するための経験的データを収集するために、上記の地域に対応する試験場で圃場試験を行った。 DSSの社会経済的部分については、線形計画法を適用し、必要なデータは、3つの地域で選ばれた村の農家圃場試験から集められる。

 本書には、ナカラ回廊地域の村落や農家における現状の社会経済的分析と、ナカラ回廊地域の村で実施した農家圃場試験における作付体系の農業経済的影響が報告されている。本書が、アフリカにおける市場志向型農業開発を強化するProSAVANAプログラムの目的を達成するのに役立つことを願っている。

 
 
■要目
[目 次]

まえがき

 第1章 モザンビーク北東部地域における営農の現状と課題

 第2章 モザンビーク北西部における天水畑作経営の展開
 −ニアサ州リシンガ市近郊農村の事例−

 第3章 モザンビークにおけるダイズ作農家の特徴と制約要因
 −ザンベジア州グルエ郡の事例分析より−

 第4章 モザンビークにおけるダイズ作の技術体系
 −ザンベジア州グルエ郡における事例より−

 第5章 モザンビーク北部地域における小規模農家の営農戦略の意義
 −食料増産,商品化の可能性と今後の課題−

 あとがき