シリーズ21世紀の農学
山の農学−「山の日」から考える
 
 
 
日本農学会編
 

■定価(本体1,852円+税)
■A5判 155頁
■発行年月  2017.04
■ISBN 978-4-8425-0555-8

 
 
■概略

本書は山を農学の視点で捉え, 現代から将来にかけて,「私たちと山」を考えてみたい.

 
 
■解説

 山の日が制定され, 今年から国民の祝日になったのはまことに喜ばしい.
 国土地理院によれば「山」とは周りに比べて地面が盛り上がって高くなっているところで,「山地」は地殻の突起部をいい, 総括的な意味を持つものをいうのだそうだ.
 丘陵は小起伏の低山性の山地でその一部ということである.標高や傾斜の基準はなく, 自然の山として日本一低いのは弁天山(6.1m, 徳島県徳島市)ということだから,「山」は私たちときわめて身近なものである.
 農学は山と切っても切れない縁にある.
 第一は林学が対象とする森林は, その多くが山に立地し, 逆に山の植生の代表が森林だという関係にある.20世紀に入り植物生態学の基本的な理論体系である植物遷移学説がアメリカのF.E.Clementsによって体系化された.彼の, ”Plant succession”が出版されたのは1916年であるが, 相前後して日本でも林学の泰斗, 本多静六博士は森林の変化について実証的な研究を行っており, 日本の森林帯論の原点である「日本森林植物帯論」を出版したのは1912年であった.「日本森林植物帯論」は日本の生態系の原理でもある.
 第二に山自体が林業や畜産業の舞台であるだけでなく, そもそも日本の農地土壌全体が山の産物である.現代でも山の影響が直接見える黒ボク土, 褐色森林土などは畑作, 果樹作の主要な生産を担っている.
 第三に私たちは歴史的に山の生態系サービスを受けてきた.戦後に至るまで多くの人口を養うために里山などの生態系サービスをオーバーユースしてきた長い歴史がある.このオーバーユースは山の生態系に少なからぬ影響を与えた.以降, 農業技術体系が機械化・化学化し, 労働集約型から離脱するのに伴い現在では逆にアンダ−ユースが続くようになり, 人手が入らないための里山の荒廃や野生鳥獣が新たな問題となるように変わった.同時に, 人口や商業・製造業の減少による地方の衰退が顕著になり, 山には観光などの別な意味での生態系サービスが期待されるようになった.
 このように相互に影響しながら変化を続ける山を農学の視点で捉え, 現代から将来にかけて,「私たちと山」を考えてみたい.

 
 
■要目
[目 次]

 はじめに

 第1章 大学山岳部が農学研究に果たした役割

 第2章 古地図から読み解く百年で移り変わる山の風景

 第3章 山を登る雑草−白山国立公園の高山・亜高山帯に侵入したオオバコの影響と対策−

 第4章 国立公園等の保護地域における登山, 観光と自然保護

 第5章 獣害対策から考える山との向き合い方

 第6章 地方創生―里山活用における山羊の放飼事例―

 第7章 山の昆虫から農業への贈り物−里山の景観管理と生態系サービス−

 第8章 日本の自然環境・生物多様性と調和した林業のあり方

 あとがき・著者プロフィール