気候変動の農業への影響と対策の評価
 
 
 
古家 淳 編著
 

■定価(本体1,500円+税)
■A5判 155頁
■発行年月  2016.09
■ISBN 978-4-8425-0551-0

 
 
 
■解説

  本書は、大きく分けて3つの部門から構成される。最初の部門は、農業の適応および緩和技術の評価に関わる課題であり、プログラム2、5、6に相当するものである。 まず、第l章「動学的CGEモデルによる高温耐性品種米普及の経済的評価(阿久根優子)」では、コメ生産における高温耐性品種の導入の効果を土地利用の制約を考慮したCGEモデルによって分析し、高温耐性品種米の普及を農地流動化と合わせて実施すると、経済厚生の改善を大きく進めることを明らかにした。
次に、第2章「農業分野の気候変動対策技術開発を支援するための経済評価手法の研究(小林慎太郎)」では、実際に開発された緩和技術と適応技術を評価する場合の問題点を明らかにし、技術に関わる偏りのないデータを収集する方策を提示し、農業技術が品目数と地域数にしたがって多様である点と、評価する対象が農家レベルなのか国レベルなのかという点を整理した上で、緩和技術と適応技術の評価例を示した。

 第2の部門は、消費者選好に関わる課題であり、プログラム3に相当するものである。
第3章「輸入実績の異なる農産物に対する消費者の好みの比較―経済シミュレーションにおける国産品と輸入品の代替関係の設定に向けて―(合崎英男)」では、選択実験を行い、国産品の価格が上昇したときに、どれだけ輸入品を選択する確率が上昇するかなどを数値で示した。

 第3の部門は、気候変動の影響評価に関わる課題であり、プログラムl、2、4に相当する。
まず、第4章「気候変動が我が国の農業生産に与える影響動学的パネルデータ分析―(徳永澄憲・沖山充・池川真里亜)」では、気候変数を含むコメと野菜・いも類の生産関数を動学的パネルデータで計測し、年平均気温が1%上昇すると、コメの生産量が長期では0.55%減少し、野菜・いも類の生産量が長期で1.2%減少することを明らかにした。 次に、第5章「将来の気候変動と稲作の総合生産性―マルムクィスト生産性指数で計測した稲作の全要素生産性に対する影響要因―(園光洋二・工藤亮治)」では、統計データから計算した全要素生産性を被説明変数とし、気候変数や収量指数などを説明変数とする回帰式を計測し、2060年以降、西南日本の稲作の生産性が大きく低下することなどを明らかにした。
つづく第6章「気候変動と稲作所得、地域経済―動学地域応用一般均衡モデルによるシミュレーション―(園光洋二)」では、稲作に対する気候変動の影響が他産業に波及する効果を分析し、米価が低下する結果、消費者の厚生水準が上昇し、他産業の雇用が増加することなどを明らかにした。

 最後の第7章「気候変動が世界の長期の作物生産に与える影響―収量関数への作物モデルの導入―(古家淳)」では、作物モデルの要素を組み込んだ収量関数を4つの主要作物を対象に世界各国・地域について計測し、将来の気候変動下では、2050年までに低緯度地域の各作物の収量が低下することなどを明らかにした。

 
 
■要目
[目 次]

 序 章:プロジェクトの背景・課題と本書の要約

 第1章:動学的CGEモデルによる高温耐性品種米普及の経済的評価

 第2章:農業分野の気候変動対策技術開発を支援するための経済評価手法の研究

 第3章:輸入実績の異なる農産物に対する消費者の好みの比較
    ― 経済シミュレーションにおける国産品と輸入品の代替関係の設定に向けて ―

 第4章:気候変動が我が国の農業生産に与える影響
    ― 動学的パネルデータ分析 ―

 第5章:将来の気候変動と稲作の総合生産性
    ― マルムクィスト生産性指数で計測した稲作の全要素生産性に対する影響要因 ―

 第6章:気候変動と稲作所得、地域経済
    ― 動学地域応用一般均衡モデルによるシミュレーション ―

 第7章:気候変動が世界の長期の作物生産に与える影響
    ― 収量関数への作物モデルの導入 ―