食生活の中の野菜
― 料理レシピと家計からみたその歴史と役割 ―
 
 
 
施山 紀男 著
 
  

■定価 (2,000円+税)
■A5判 159頁
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■発行年月  2013.08
■ISBN 978-4-8425-0518-3

 
 
■概略


料理や家計を中心に食生活の中の位置付けや役割の視点から野菜の変化を振り返り考える.

 
 
■解説


 ほとんどの野菜はエネルギーやタンパク質の主要な供給源でないので,生命の維持という食事の最も基本的な目的からみるとその役割は大きくないが,ビタミン,ミネラル,食物繊維などの栄養素の供給源であり,最近では野菜の生理機能性といった成分が注目されている.料理においては種々の副食物の素材として,あるいは魚や肉類の料理の付け合わせに用いられる.薬味や調味料・香辛料として,あるいは妻物など料理の飾りとして広く利用される.そのような理由からか,野菜は農産物の中では消費者の関心を集め,マスコミの話題に上がることが多い.そして時にはマイナスイメージで取り上げられることもある.例えば,高度経済成長期には「物価上昇の元凶」の1つとみなされ,価格を安定させるために大量生産・大量流通の体制が整い,野菜が規格化すると,「野菜がいつでもどこでも同じになり,個性がなくなり,画一化した」といわれた.また,施設栽培が盛んになり野菜が周年的に出回るようになると,「旬がなくなり,栄養価が下がってまずくなった」ともいわれた.さらには「農薬に汚染された危ない野菜が流通している」との危惧もしばしば現れた.現在では安全・安心や健康への効果が話題になることが多い.このように野菜は生活必需品であり,栄養源として健康の維持・増進に不可欠な食品であるというイメージが強いためか,価格や食味,栄養価,安全性に人々は特に敏感に反応するように思われる.
 日本の近代化が始まった明治時代から大正時代,15年戦争と戦後の復興期,量的に拡大した高度経済成長期,オイルショック以後の高品質化の時代,そして,「飽食」のバブル期を経て,デフレ下の経済不況の現在までの間に野菜は大きな変化を遂げてきた.明治政府によって外国から新しい野菜が導入されたことに始まり,その後現在までいく度か「新野菜」の波があり,種類が増えてきた.品種改良や栽培技術の進歩により,野菜の色彩,形,味,栄養分が変わり,野菜の出回り時期も大きく広がり,ほとんどの野菜が年間を通じて流通するようになった. 明治時代以降現在までの間に日本人の食生活は大きく変化してきたが,特に高度経済成長期以降現在までの変り様は世界史上類がないといわれる.そして食生活の変化と平行して,野菜も種類だけでなくその調理法も変化し,多様化してきた.
 このような野菜の変化は生産から流通・加工,販売,消費までの各段階の変化によって引き起こされたものであるが,そのうち最も決定的な動因は,最終実需者である消費者の需要すなわち消費動向であり,その根底にあるのは食生活の変化であった.少子高齢化やデフレ状態の経済状況の中でこれから野菜の消費はどのように変わっていくのだろうか.また,今回の東日本大震災はこれからの日本人のライフスタイルや消費行動に大きな影響を及ぼすことが考えられる.そこで,料理や家計を中心に食生活の中の位置付けや役割の視点から野菜の変化を振り返り,これからの野菜について考えることにしたい.

 
 
■要目

[目 次]

 はじめに

 第T部 食生活と野菜の変化(総論)

  第1章 日本の食生活と野菜の特徴
  第2章 野菜発達概史
  第3章 料理書の中の野菜
  第4章 家計の中の野菜 〜高度経済成長の始まりから現在まで〜
  第5章 料理書と家計からみた野菜の「旬」と消費の季節性
  第6章 食生活の中の野菜の役割と適応 〜第T部のまとめ〜

 第U部 個別の野菜が果たしてきた役割と食生活への適応(各論)

  第1章 日本の伝統的な食生活の発展を担ってきた野菜
  第2章 明治以降の食生活の発展を担ってきた野菜
  第3章 高度経済成長以降の洋風化を象徴する洋菜類第3世代
  第4章 食生活の多様化と本物志向を象徴する野菜
  第5章 食生活の指標:香辛・調味野菜
  第6章 デザート野菜の発展:メロン,スイカ,イチゴ

 第V部 まとめ 〜過去から現在,そして未来へ〜

  第1章 日本人の感性が創りだした日本の野菜
  第2章 これからの野菜

 おわりに・参考文献・調査した料理書と資料・索  引